カラスヨトウ属幼虫の行動と食草について
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概要
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ヤガ科カラスヨトウ属(Amphipyra)の幼虫は種によって行動上の違いがみられる.すなわち,カラスヨトウ(A. livida)の1齢幼虫はルーパー型の歩行運動の前に上半身をもち上げて上下に振る運動(振り子運動)をくり返し,また,糸を吐かずに落下するが,他の種では振り子運動はみられず,落下しても糸を吐いて空中で止まった.また,ぜん動型の歩行運動をする2齢幼虫以降でも違いがみられた.刺激を与えるとカラスヨトウは丸まって落下するのに対し,その他の種は上半身を持ち上げて静止した.静止姿勢は一齢幼虫から全ての種でみられたが,それぞれの種に特徴あるポーズであった.これらの行動の違いは食性との関わりが深いと考え,食草探索をすると共に,カラスヨトウ,オオシマカラスヨトウ(A. monolitha)シロスジカラスヨトウ(A. tripartita)の3種幼虫に多くの植物を与えて食草の適応範囲を調べた.この結果,以下の植物を食草として初めて記録するとともに,カラスヨトウでは草本,オオシマカラスヨトウとシロスジカラスヨトウでは木本への適応が強いと考えられ,刺激に対する幼虫の行動の違いに結び付いていると考察された.カラスヨトウ:ニンジン(Daucus carota L.)(セリ科),ノアザミ(Cirsium japonicum DC.)(キク科).オオシマカラスヨトウ: アラカシ(Quercus glauca Thunb.)(ブナ科),アベマキ(Queycus variabilis B1.)(ブナ科),サカキ(Cleyera japonica Thunb.)(ツバキ科),イロハモミジ(Acer palmatum Thunb.)(カエデ科),ネズミモチ(Ligustrum japonicum Thunb.)(モクセイ科).シロスジカラスヨトウ:アラカシ,サカキ.オオウスヅマカラスヨトウ:アラカシ,マメザクラ(バラ科)(Prunus incisa Thunb.),ネズミモチ.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1994-02-28
著者
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