カラスヨトウの有効積算温量と人工餌飼育
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概要
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カラスヨトウAmphipyra livida corvina Motschulskyの幼虫-蛹期の発育零点と有効積算温量は,三重県産の材料をもとに津金(1975)によりそれぞれ8.7℃および約840日度と求められている.岐阜県産の材料をもとに,幼虫にタンポポやハコベを与えて6つの温度条件下(10℃,13℃,15℃,20℃,25℃,30℃)で追試したところ,発育零点は8.9℃,有効積算温量は784日度となり,津金(1975)とほとんど同じ結果が得られた.なお,温度(t)と発育速度(V)の関係を一次式で示すと,V=-114.09+12.76tであった.また各温度条件でみると,10℃では2個体のみが前蛹まで進んだが蛹化には至らず,また30℃では蛹にまでなった個体はわずかに1匹であった.岐阜市での8.9℃以上の年間積算温度量は約2,650日度であり,数字だけからみれば本州中部地方において十分に年2化性をとることのできる昆虫といえる.しかし,1齢幼虫が花や新芽にしか食いつかず,また30℃のような高温では幼虫がうまく生育しないことを考えると,カラスヨトウは成虫が夏眠することで高温期をやり過ごすよう温帯に適応したものかも知れない.また,食草確保の手間を省くため,カイコの人工餌(KIT-32)を使った飼育試験も行った.その結果,幼虫は全体的に体色が白っぽくなり,生育に要した幼虫および蛹期間はわずかに長かったものの,前蛹期間は短く,蛹重量も雌雄とも勝っていた.カラスヨトウに対して人工餌は良好な飼育結果が期待できるものと考えられる.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1997-11-30
著者
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