幼虫期の温度条件がベニモンカラスシジミ長野静岡亜種の成虫に与える影響について
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概要
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著者の一人,大鐘は1995年冬季に長野県南信濃村で採卵したベニモンカラスシジミ長野静岡亜種Fixsenia iyonis surugaensis(Fujioka)を翌春飼育したところ,室温で飼育した個体と25℃の恒温室で飼育した個体の間に尾状突起の長さに違いがあることに気づいた.そこで,翌1997年に同地で採卵した卵より孵化した幼虫を15℃と25℃の温度条件で飼育し,羽化した成虫を比較検討した.前翅長と後翅長共に15℃で飼育された個体が,25℃で飼育された個体よりも相対的に大きい傾向にあった(Table 1,Figs 3,4).このことは,15℃で飼育した幼虫期間が25℃での幼虫期間よりもおよそ30日間長かったことから,幼虫期間の長さと関係しているように思われる.前翅長と後翅長とは逆に,尾状突起の長さは,25℃で飼育された個体が15℃で飼育された個体よりも有意に長かった.難波(1988)によると,長野静岡亜種は日本産亜種の中では中国地方亜種に次いで尾状突起が長いが,かなりの変異が見られると言う.今回,25℃で飼育した個体は,中国地方亜種よりも尾状突起の長さは長かった.また,15℃では,紀伊半島亜種と原名亜種の徳島,高知個体群と同程度に短かった,以上のことから,少なくとも長野静岡亜種において,尾状突起の長さは遺伝的要因に加えて,幼虫期の温度条件によっても影響を受けることが推察された.
- 日本鱗翅学会の論文
- 2000-12-20
著者
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橋本 里志
Zoological Laboratory, Faculty of Agriculture, Meijo University
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大鐘 裕道
Environmental Pollution Research & Analysis Center Co., Ltd
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小野寺 慎吾
Zoological Laboratory, Faculty of Agriculture, Meijo University
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大鐘 裕道
Environmental Pollution Research & Analysis Center Co. Ltd
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