Trichopterigia micradelpha Proutをもとに新属Archaeocasisの提出(鱗翅目:シャクガ科)
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概要
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筆者は台湾から末記録のTrichopterygini族の雄1個体を調べたところ,翅脈や斑紋においてTrichopterigia micradelpha Prout,1958の原記載とよく一致した.ところが,雄交尾器はTrichopterigia属のそれとは著しく異なり,むしろAcasis属やOtoplecta属の交尾器に近いものであった.Yazaki(1993)は,'Moths of Nepal,part 2'の中でTrichopterigia micradelpha Proutを記録し,雄交尾器の写真を載せた.同時に,彼は他のTrichopterigia属との雄交尾器の違いを述べ,本種の分類学的地位を明確にするには,さらなる研究の必要性を説いた.また,彼の示した雄交尾器は台湾産のものと同一であった.筆者は,ロンドン自然史博物館のScoble博士のご好意で,Trichopterigia micradelpha Proutの副模式標本(1♂1♀)と台湾産標本とを比較する機会を得,次のような結論に達した.1.台湾産の個体は,Trichopterigia micradelpha Proutと同一種である.2.雌雄交尾器の形質から判断すると,本種はTrichopterigia属よりもAcasis属やOtoplecta属により近縁である.3.雌雄交尾器の特徴を基に,本種を模式種として新属Archaeocasisを設ける.Archaeocasis gen.nov.Type species:Trichopterigia micradelpha Prout,1958.本属は,Trichopterigia属とは雄交尾器の左右のvalvaのcostaの基部背方が内面中央部で融合すること,valvaのcucullusは短く先端が丸みを帯びること,雌交尾器のcorpus bursaeは針状の突起で部分的に覆われることなどの形質で区別される.さらに,Acasis属やOtoplecta属とは,後翅のRs脈とM_1脈が有柄であること,雄交尾器のtegumenの背面がせまいこと,雌第8腹節とpapillae analesとの環節間膜背面に指状の陥入部が存在することなどの形質で区別される.後二者の属との姉妹群関係については,Acasis属の単系統性に問題があるので本研究では扱わない.Archaeocasis micradelpha(Prout),comb.nov.台湾産個体の前翅長(13.0mm)は,副模式標本の前知長(14.3mm,14.2mm)に比して短いが,他の点では区別し難い.
- 1995-09-20
著者
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