不在のテクスト、あるいは幻視される物語-「ポラーノの広場」の語りをめぐって-
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概要
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「ポラーノの広場」と題されたこのテクストは、語られることになる〈あの年のイーハトーヴォの五月から十月〉の〈話〉を中にはさんで、前後の〈エピローグ〉と〈プロローグ〉がその〈話〉の《時制》を明確に、また方法的に縁どっています。〈主人公〉でもあり、またその〈話〉の〈記述者〉でもある〈わたくし=キュースト〉が、その〈七年〉前の話を思い出し、語り出そうとする起点となったのが、どこからともなく届けられた、《ポラーノの広場》の《うた》が記された〈一つの楽譜〉でした。〈わたくし〉は、その創り手として一人の少年を想起するのですが、今はそれも定かではありません。いわばその《うた》は〈不在〉のある〈場所〉と〈時間〉から届けられたもの。《ほんとうのポラーノの広場》とは何か--作品はその〈わたくし〉が生きている《いま=現在》という時間を暗く冷徹に縁どりつつ、そのものを幻視するかのように《不在の物語》が紡がれます。本稿は、そのようにして方法化された語りの構造を分析しつつ、そこに顕在化される《物語》の意味を解明せんとするものです。
著者
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