<近代家族>の形成 : 藤村『家』の場合=<個>の実体をめぐって(第2部)
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概要
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現代社会を生きる私たちは、その<日常>にあって、自己の<身体>をきわめて無防備にさらし続けている。近代以降、幾多の夢をつむぎ続けてきた<家族>も、もはやその<身体>を横たえる場所ではありえない。人々は、宙吊り状態の中で、その<身体>を「浮遊」させ続けねばならない。あるいはまた、むき出しのままで、日常にその<身体>をさらさねばならぬ。本稿では、藤村の『家』について、<家>とその制度の中に深く拉致され抑圧される<女性>の(身体)について特に留意しながら、<近代家族>の形成されていく過程、あるいは、そこに立ち現れてくるようにみえる<個>の実体について考察した。この時、<家>という制度が単なる外在的なものとしてではなく、人々の無意識をも深く凌駕し支配したこと、いわば<近代>を支配したイデオロギー的装置として機能しつつ、それら人々の<身体>や<言葉>そのものを深く眠らせ続けたことは、すでに周知のところ。例えば、作品『家』における<他者性>の発見は、今までの自己を相対化すべき新たな<主体>と<言葉>の獲得を強く促しているように思われる
- 山梨英和大学の論文
- 1996-12-10
著者
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