アメリカの思考教授研究における情意目標論の展開 : 「性向」概念に焦点を当てて
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概要
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本稿では,アメリカの思考教授研究における「性向」概念,もしくは,「精神の習慣」概念をめぐる議論を読み解き,情意領域の教育目標化の課題について考究した。まず,1980年代のエニスやポールらの「性向」概念への着目について概観した。次に,マルザーノらの「学習の次元」を取り上げ,「精神の習慣」がどのように位置付けられ,その指導と評価の方法がどう捉えられているのかを明らかにした。さらに,パーキンスやティッシュマンらが提唱する「性向」概念の分析的把握,および,認識と行為のギャップを埋める新たな思考教授の方法論(「文化化」)に検討を加えた。最後に,「性向」概念の重視を態度主義ではなく,知的な学習を促す授業づくりや学校づくりへとつなげていく方策について論じた。「性向」概念は,教室に真正の学問的・探究的な活動が成立した時に学習者に起こる,価値ある変化の全体性を表現するものといえる。ゆえに,「性向」それ自体ではなく,教室に真正の学習を実現することが第一義的に目指されねばならない。また,「性向」概念は,知識や思考スキルのような学力評価の対象ではなく,学校づくりを導くヴィジョンやミッションとして位置付けられるべきものである。そしてそれは,カリキュラム評価の対象として,個々の子どもではなく,教室や学校のシステムや文化などの教育条件の質を評定する指標として用いられるべきものであろう。
- 日本教育方法学会の論文
- 2009-03-31
著者
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