誤解法聴取による正解法理解促進効果 : 小学5年生の算数授業場面における検討
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概要
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本研究では,児童が他者の誤りからいかに学ぶことができるかを実証的かつ実践的に検討するため,算数授業において教師から指名された児童が他の児童を代表して解法を発表する場面を構成し,発表される解法を正しい解法のみとするときと誤った解法を含めたときとで聞き手の児童の正解法理解がいかに促進されるかを比較検討した。従来の研究から,正誤解法の提示は事前に正解法を利用する児童に効果があることは知られているが,本研究では,事前に誤解法を利用する児童でも,自らと同じ誤解法が発表される場合は効果が生じることを示す。小学校5年生6クラス170名に算数文章題の授業を行い,児童が正解法を発表し教師も正解法を解説するCC条件と,児童が誤解法を発表し教師は正解法を解説するIC条件を用意し,聞き手児童の事前解法との交互作用を検討した。授業前後のテスト結果より,IC条件では,発表されたものと同じ誤解法を事前に利用していた群の方がそれ以外の誤解法を利用していた群よりも正解法の根拠を高い割合で記述できるようになった。CC条件ではこうした差は見られなかった。この結果から,誤解法の説明は同じ誤解法を使う聞き手の学習に有効であることが示唆された。そのプロセスには,提示される解法と自らの解法とが一致することにより,正誤両解法の対比が行いやすくなり,解法手続きの重要な要素のメタ認知的理解が促進されるメカニズムがあることを考察した。
- 2010-03-20
著者
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