無心、信仰、スピリチュアリティ : 「抵抗の拠点としての無心」に向けて(思想としての宗教,<特集>第六十八回学術大会紀要)
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概要
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「無心」概念を手掛かりにした「宗教」の「際」の考察である。鈴木大拙『無心ということ』に拠りながら「子どもの無心」を問い、「信仰」を問い、「他者の痛みへの感受性」とつなぎ、「抵抗の拠点としての無心」を構想する。『無心ということ』の用語法は禅の伝統に依拠しつつも、禅に限定されない。浄土教にもキリスト教の内にも無心を見る。本稿はそれを「広義の無心」と名付け、人間自然(human nature)に属する事柄と理解する。次に、エリクソンの「アイデンティティの思想(アイデンティティを越えてゆくことbeyond identity)」を手掛かりにして、無心を「beyond "I"」と理解する。「I」は「我(自我・作為・我執性)」、「beyond」はそこから離れる・それを超えてゆく・その背後。しかしただ我から離れるのではなく、我から離れることもでき、それを生きることもできるという意味において、我に囚われない「自在」である。さらに、そうした「広義の無心」を「抵抗の拠点としての無心」と読み直す。非暴力的抵抗は「我」の怒りからは生じない。その「我」から離れる方向に初めて成り立つ。そうした「抵抗の拠点としての無心」を人間自然に属する事柄として読みとく試みである。
- 2010-03-30
著者
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