心臓手術における抗PF4・ヘパリン複合体抗体に対する危険因子の検討

概要

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ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)は,免疫機序で発生するヘパリンの重篤な合併症である.抗PF4・ヘパリン複合体抗体(HIT抗体)はHITの病因となるが,心臓外科領域において,その詳細は明らかではない.今回,カテーテル検査後3ヵ月以内に心臓手術を施行された計28例を対象とし,HIT・HIT抗体の発生率,HIT抗体のseroconversion・危険因子について検討した.HIT抗体は術前と術後にELISAを用いて測定した.全症例において臨床上明らかなHITは認めなかった.術前HIT抗体は28例中1例(4%)にみられ,28例中6例(21%)で術前HIT抗体陰性から術後陽性となった(seroconversion).術後HIT抗体陽性と陰性患者において術前検査結果と人工心肺時間などを比較検討した結果,総グロブリンのみが有意差を示した.術前総グロプリンは術後HIT抗体陽性群(2.89±0.33g/dl)において陰性群(2.42±0.50K/dl)より高値であった(p=0.030).また,術前総グロブリン値は術後HIT抗体陽性と関連性があった(p=0.048;オッズ比.12.09;95%信頼区間,1.02-144.06).Seroconversionの発生率は低く,術前総グロブリン高値は術後HIT抗体陽性の危険因子となる可能性があると考えられた.
東京女子医科大学の論文