人工林の気象害跡地における微地形に対応した森林群落の再生過程
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概要
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人工林の気象害跡地における,森林群落の再生過程の地形による違いを明らかにするために,1986年に冠雪害を受けた後放置されたスギ・ヒノキ人工林跡地において,斜面の稜線から沢までを含むように調査区を設置し継続調査を行った。調査区では,微地形スケールで地形区分を行い,攪乱後7年目から攪乱後20年目まで木本個体の動態調査を毎年行った。その結果,下部谷壁斜面から流路までの下部斜面域では,高木種は調査期間中に大部分が枯死し,低木林群落として推移した。斜面中程(上部谷壁斜面中央部及び下部)では常緑高木は個体数,種数とも微増にとどまり,成長も停滞していた。常緑低木のアオキの個体数が大幅に増加した。落葉高木は,種数,個体数は大きく減じるものの先駆性高木の優勢木が大きく成長して優占した。これらの結果,先駆性高木の高木層とアオキの低木層が発達して中間層を欠く,単純な構造の群落となった。斜面最上部(頂部斜面及び上部谷壁斜面上部)ではアラカシを中心とした常緑高木が初期から優占状態を保ちながら成長し,一方で落葉樹は種数,個体数とも減少し,常緑樹が密生した群落となった。このような,再生群落の生活型組成及び動態の地形に対応した差異は,下部斜面域と斜面中程との間は明瞭で,斜面中程と最上部との間は連続的であり,地形に対応した差異は,年を追うごとに明瞭になっていった。またアラカシ二次林は,必ずしも先駆性高木種の二次林から遷移してできるわけではないことがわかった。
- 2009-12-25
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