カンボジア中央部の平坦な低地に成立する乾燥常緑林とその立地環境
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概要
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東南アジアの熱帯林は,Koppenの気候区分による熱帯雨林気候(熱帯モンスーン気候)から熱帯サバンナ気候に含まれる地域に位置している。降水量の極めて少ない乾季をもつサバンナ気候の地域には,乾季に落葉する落葉季節林が分布している。カンボジア中央部の平坦な低地は気候区分では乾季を持つ熱帯サバンナに位置し,無降雨月を含む乾季が存在する。このような気候条件下では落葉林が成立すると推定される。しかしながら,そこには熱帯雨林や常緑季節林に生育する樹木にも匹敵するサイズの大木を含む見事な常緑林が成立している。気候条件から考えると成立し得ないはずの常緑林が存在できる理由を明らかにするため土壌調査,土壌水分や地下水位の経時的観測などを行い,そのデータなどを解析した。その結果,乾燥常緑林では,隣接する乾燥落葉林や混交林に比べ乾季においても土壌水分含有率が高く,乾季終盤のもっとも土壌が乾燥した時期においても,植物の生育に支障をきたすような土壌水分状態ではないことが確認された。それらは,その地域の土壌が乾季においても土壌水分を保持できるような微細な土壌孔隙を多く含むという特徴を有すること,その土壌が厚い層を成していることによって多量の水分を貯めておくことができることなど,立地環境条件によってもたらされていると推察される。
- 2009-06-25
著者
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