中小法人の課税所得計算に影響する税法規定の検証
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概要
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新会社法の施行(平成18 年5月)に伴って、平成18年度税制改正では役員給与の損金算入に対して大きな見直しが行われた。つまり法人が役員に対して定期的に支出する給与を役員報酬として損金算入とする一方,利益処分などで臨時的に支出する報酬を役員賞与として損金不算入にしてきた規定を厳格化し、要件にあてはまらない役員給与を原則として損金不算入とするよう規定を改めた。条文構成的にも,従前は法人税法第22 条の例外規定として,損金不参入が明示されていたが,今回の改正では,提示された要件に該当しない役員給与は原則損金不参入とされた.会社法や企業会計基準で役員賞与が明確に費用として位置づけられた扱いとは,大きく異なることとなった.中小企業のデータを用いた5年間のトレンド分析からは,役員給与が利益調整として機能しているような傾向は確認できず,従って,企業経営上の判断に従った役員給与の支給がなされているということを含意している.さらに特殊支配同族会社に該当する場合には、基準所得などの要件の下で、業務主宰役員の給与所得控除に相当する金額を損金不算入とする規定が新たに盛り込まれた.当規定は個人所得と法人事業における「経費の二重控除」による不公平是正の対応策と位置づけられ,課税の公平性を担保するために,これを抑制する手立てとして規定された意図は理解できる.しかし,現在の「特殊支配同族会社」の要件においては,「経費の二重控除」が発生しえない法人に対しても,一律に追加的な税負担が強いられる可能性を否定できない.これを是正するためは,法人課税・個人課税の役割を改めて整理し,本来課税されるべき所得に対して適切な課税が成されるような調整が必要であるといえる.
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