わが国主要企業のキャッシュ・フロー情報特性に関する実証研究
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概要
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キャッシュ・フローの情報特性に関する実証的研究の多くは、キャッシュ・フローから得られる情報が会計利益から得られるそれと異なるのかどうか、あるいはキャッシュ・フローの時系列特性を検証しながら将来キャッシュ・フローの予測モデルを推定する、という2つの視点から行われている。2000年3月期から導入されたキャッシュ・フロー計算書は、わが国の企業会計制度や経営の戦略的意思決定に、あるいはそのステークホルダーにとって大きな役割を果たすことになる。本稿では、情報利用者の立場からキャッシュ・フローの情報特性を明らかにする。まず、1980年代後半以降に行われた米国でのキャッシュ・フローの情報特性に関する研究を概観し、それが米国でどの程度実証的に明確にされているのかを検討した。そのような議論の経過を経て、米国ではキャッシュ・フローが会計利益とは異なる情報特性を持ち、かつ有用であるという見方が定着しはじめている。そこで、キャッシュ・フローの情報特性に焦点を合わせた実証分析であるBBD[1986]の実証研究手法をベースに、日本企業をサンプルとした実証分析を行った。その結果、サンプル・データの対象期間や件数がBBDとは異なるものの、両方の研究に多くの共通点が確認できた。すなわち、これまでの伝統的キャッシュ・フロー尺度は利益に類似した情報であるが、より多くの調整を行った新しい代替的キャッシュ・フロー尺度は利益と相違した情報内容を含有しているということが統計的に立証できた。さらには、1年ないし2年後のをキャッシュ・フローを予測する尺度としては、利益指標などよりキャッシュ・フロー自身がもっともその予測能力が高い、という検証結果も提示することができた。
- 摂南大学の論文
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