実効税率と直接投資に関する日米間の実証分析
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概要
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国際的な資本移動が活発化する中で,投資受入れ国における税負担の多少が直接投資に対してどのような影響を及ぼしているのかについて,これまで欧米の研究者を中心に積極的な議論が交わされてきた.1970年代までの中心的な主張は,「外国税額控除」によって海外所得に対する追加的な税負担は発生せず,したがって投資受入れ国の実効税率が海外からの直接投資にほとんど影響を与えてはいない,という内容であった.しかしHartman[1984]の研究結果はそれまでの支配的な意見とは異なったもので,投資受入れ国で十分な利益をあげている海外子会社が自己の利益を原資として再投資する場合,投資受入れ国の税率が影響を及ぼすということを主張した.この理論を応用した実証結果がその後も蓄積されており,先行研究に沿った内容が多く示されている.しかしその一方で,海外直接投資が影響を受ける要因の多様性や多国籍企業の財務政策のために,明確な結果を得ることの難しさも指摘されている.本稿では,Hartman[1984]の研究を拡張したSlemrod[1990]の手法に従って,日本からアメリカへの直接投資関数を推計し,実効税率が投資額に与える影響について検証した.1980年代以降のデータを用いた追試では先行研究と同様,推計自体の安定性に課題もあるが,税率に関する影響についてはほぼ理論に沿った結果が得られた.つまり,日本からアメリカへの直接投資額は,アメリカの実効税率に対してはマイナス,日本の実効税率に対してはプラスの影響を受ける.したがって,アメリカの税率の引下げは日本からの投資額を増大させる効果を持ち,一方で,日本の税率の引下げは海外投資額を減少させる方向へ働く.
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