高齢脳梗塞患者のせん妄発症の実態と発症に関与する因子
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概要
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本研究の目的は脳梗塞の治療を受けている高齢患者を対象に,せん妄発症の実態と発症に関与する因子および年齢との関連を明らかにすることである.調査を行った脳神経外科病院1施設において,診療記録,看護記録などから,基本属性,せん妄発症状況などに関する19項目をデータ収集した.対象者158名をせん妄発症群とせん妄非発症群の2群に分け,単変量解析を行い,有意差のあった因子についてステップワイズ法によるロジスティック回帰分析を行った.せん妄の発症は,22.2%にみられ,入院直後に発症し持続期間が1日間の場合が多かった.年齢階級別の発症率は,前期高齢群が17.9%,後期高齢群25.3%であった.単変量解析により有意差のみられた因子は「入院時間帯」「ライン類の本数」「集中治療室の利用あり」「意識レベル」「入院前に睡眠導入剤の使用あり」で,ロジスティック回帰分析の結果,「17時から翌朝9時までの入院」(オッズ比2.59;95%信頼区間1.18〜5.67),「ライン類が2本以上」(オッズ比4.63;95%信頼区間1.88〜11.40),「意識レベルJCSI-2以下の水準」(オッズ比3.12;95%信頼区間1.42〜6.84),「入院前に睡眠導入剤の使用あり」(オッズ比2.63;95%信頼区間1.16〜5.95)の4項目が採択された.さらに,オッズ比の高い「ライン類が2本以上」「意識レベルJCSI-2以下の水準」を含む組み合わせを保有する者に発症率が高く,この4因子中いずれか1因子をもつ場合の発症率が9.8%であったのに対し,4因子すべてをもつ場合は75.0%であった.以上より,高齢脳梗塞患者に対するせん妄発症の予測と予防的看護介入は高齢者の入院と同時に開始されることが望ましく,前期高齢者と後期高齢者のせん妄発症因子の差異に考慮した介入法と,さらに詳細な因子およびその因子の組み合わせの特定が予防的看護ケアに寄与する可能性が示唆された.
- 2005-11-01
著者
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