社会科学と社会政策(II) : Meese Commissionについて(文学部創設百周年記念論文集I)
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概要
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本稿ではAttorney General's Commission on Pornography (Meese Commission)の答申を取りあげることにより,社会科学(行動科学,社会心理学など)が***グラフィーの法的規制という問題に対して,如何なる処方箋を提示し,それがどのような形で社会政策に活かされたのかということについて,社会科学と社会政策といった観点から検討を加えることにする.Attorney General's Commission on Pornographyとは1985年5月20日,Reagan大統領の支持のもとに,司法長官Edwin Meese IIIが設置した諮問委員会のことである.この委員会は一年間の審議を経て,「暴力による性関係の強要といった内容の***グラフィー(sexually violent materials)を見たり,読んだりすることと,女性に対する攻撃行動の増進との間には明らかに因果関係が見出される」との結論に到達し,それに基づいて「***に対して,より厳しい法的手段を講ずるように」と答申したのである.この答申は内容的には1970年9月30日に提出されたPresidential Commission on Obscenity & Pornography (Lockhart Report)の結論を否定するものであったが,政治的にはmoral majority conservativesとanti-pornography feministsが新に手を結んだ妥協の産物とも解釈されたのである(Williams, L. 1990).一方,Meese Commissionの理論的な裏付けてとして引用されたのがNeil, M. MalamuthやEdward Donnersteinらの研究であった.彼らは主としてsexually violent materialsが与える影響について精力的な研究を重ねてきたが,その知見の解釈をめぐって,Meese Commissionとの間に対立が生じることになったのである.所謂,「実験結果や調査結果を現実の社会問題に適用しようとする場合,その限界をどこに求めるべきか」という妥当性の問題を巡っての対立である.この古くて,新しい問題に対して一般論を云々してもあまり益する所はないと思われることから,本稿ではMeese Commissionの活動を通して,社会科学と社会政策の接点はどこに求めるべきかを論ずることにする.
- 慶應義塾大学の論文
著者
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