林業・木材産業構造の変化と新たな林材業政策(現代林政の課題と方向を考える-基本法林政30年を振り返りつつ,1995年春季大会論文)
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概要
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(1)わが国の木材産業は,自動車,造船,石油化学などの煙突産業に遅れた形で,21世紀に本格的な工業化社会に突入するが,そこでは製品の大量化,均質化,規格化が求められ,そのインパクトは森林・林業にも波及する。(2)こうしたなかで,1980年代後半以降わが国の林材業に大きな変化が生じている。それは,(1)1980年代後半から国内の外材産地の再編が完了,さらに南九州を中心に外材に対抗できる川上-川下一体になった林材業の展開が見られること。(2)1990年代に入ると,米国の自然保護運動の高揚を契機に米材価格が高騰したにもかかわらず,国産材の安定供給ができないため,「値が値を呼ぶ」状況が起こり,北欧を中心に世界各地から木材輸入の道が開かれた。一方,南九州は1990年代に入っても依然としてビビッドな展開をしており,わが国林材業の工業化社会への突入の前兆と考えられる。(3)南九州の動向のなかで,特に注目されるのは,中小規模森林所有者を中心にした自伐の広汎な存在であり,地域林業政策→流域管理システムへの政策的文脈のなかで,森組が森林所有者の自伐を組織化しながら素材生産力を拡大していくことが肝要で,今後それに沿った新たな政策が求められている。
- 林業経済学会の論文
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