森林の伐採と転用が支持されるための条件(発展途上国における森林管理問題,1995年秋季大会)
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概要
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地球上における自然の領域の縮小が進むにつれて,経済的決定においても自然資本ストックの持続可能性や自然界の存在そのものに配慮した意思決定の重要性があらためて認識されている。持続可能性の基準を考えるにあたっては,自然資本と人工資本の代替可能性が1つの問題であるが,他のものによって代替できない不可逆的な損失は避けるべきだというのが原則である。持続可能性は経済的決定において優先的に守られるべき制約条件と考えられる。開発の決定に際しては,費用便益分析がしばしば用いられるが,開発による森林・林地の価値の変化を測定しようとすると,人間にとっての利用価値とは独立な森林そのものの固有価値の評価の問題にぶつかる。森林あるいは森林生態系を構成する生物の固有価値については,相手が生命ある存在,交換不可能な存在だという認識のために,貨幣的評価に抵抗がある。森林の伐採や転用について,貨幣的評価にもとづく費用便益分析を用いることが妥当でないとするならば,自然と人間に関する深い洞察に裏付けられた,より妥当性の高い意思決定方法を提示することが重要な課題となる。
著者
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