日本全国の医療施設から分離されたMRSAの分子疫学的検討 : 施設や地域を越えた同一菌の広がりはあったのか
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概要
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1990年代の初め日本全国の病院でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)の院内感染が問題となったが,施設や地域を超えて同一菌株が広がったのか,各施設で異なる菌株が流行していたのか,明かではない。そこで,1992〜93年MRSA全国調査で,39医療施設から集めた872株のうち,保存状態が良好であった866株について,コアグラーゼ(coagulase)型,薬剤耐性を再検査し,エンテロトキシン(enterotoxin)型(A〜D), toxic shock syndrome toxin-1 (TSST-1)産生性を調べ,染色体DNAを制限酵素Sma Iで切断後,パルスフィールド電気泳動(PFGE)を行った。enterotoxin型,TSST-1産生性をcoagulase型と組み合わせると,coagulase II 型, enterotoxin(staphylococcal enterotoxin:SE)C型,TSST-1産生のcoagulase II SE C+TSST-1型が,全866株の49.2%を占めた。地域別にみると,この型が,中部以東では59%以上であったが,近畿では6.9%,中国・四国・九州では21.4〜42.0%であった。一方,coagulase II SE A+SE C+TSST-1型が,近畿で34.7%,関東で21.7%,中国で15.7%みられたが,他の地域では9.0%以下であった。PFGE型は,全く同一のものを1種類とした場合,343種類検出された。114種類が複数の株から検出され,うち64種類は一施設内からのみ,50種類は複数の施設から検出された。関東・中部・近畿・九州の4地方9都府県に渡る14施設から82株検出された型や,関東・中部・九州の3地方6都県の12施設から59株検出された型,北海道・関東・中部・中国の4地方7都道県の12施設から28株検出された型もあり,施設や地域を越えて同一菌株が伝播していた可能性が示唆された。また, 5株以上検出された検出頻度の高い28種類のPFGE型の菌株が, 計413株と全866株の47.7%を占めていた。PFGE型が同一の株は,coagulase型,enterotoxin型,TSST-1産生性,薬剤耐性が概ね同じであった。
著者
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島内 千恵子
宮崎県立看護大学
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重田 真里
元宮崎県立看護大学
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毛利 千祥
宮崎県立看護大学
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勝野 絵梨奈
宮崎県立看護大学
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川口 真紀子
元宮崎県立看護大学,宮崎大学医学部病理学講座腫瘍・再生病態学分野
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井田 孝志
明治製菓株式会社 医薬総合研究所
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橘 宣祥
宮崎県立看護大学
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井上 松久
北里大学
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川口 真紀子
元宮崎県立看護大学 宮崎大学医学部病理学講座腫瘍・再生病態学分野
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