<原著>医療従事者の手指および治療環境の調査に基づく重症熱傷患者のMRSA感染対策の検討
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概要
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重症熱傷では局所的, 全身的な抵抗力減弱により高度の易感染状態にあるが, 近年, 原因菌としてMRSAが増加し看護の上でも大きな問題となっている。しかし, 感染対策とその効果についての具体的な報告は少ない。そこで, 1998年4月〜9月に3例の重症熱傷患者の温浴療法に携わった医療従事者の手指ならびに浴室と病室の環境についてMRSAの調査を行い以下の成績を得た。1)医療従事者の手指のMRSA : 温浴療法に携わった医療従事者の手指は16名中15名で陽性であり, とくに直接治療に携わった11名中6名は手形培地で左右の手から200 colony forming unit(cfu)以上で検出された。手洗い後も5名が陽性で, 手洗い前の付着菌数が多かった例が多く, 手洗いには十分注意する必要があると考えられる。2)温浴療法室の環境調査 : 処置前には1例でシャワーと浴槽など8箇所中6箇所から1〜41cfu/10cm^2のMRSAが検出されたが, 他はごく少数であった。処置後はいずれの場合も浴槽内, 患者輸送用ストレッチャーから多数のコロニーが検出された。清掃後は検査した計29箇所のうち6箇所で1〜31cfu/10cm^2のMRSAが陽性であった。これらのうち浴槽内は1例にすぎず, 浴槽の操作ボタン, シャワーの取っ手, ストレッチャーの枕, 治療室のドアノブ, 患者用ワゴン車などからであり, 注意すべき結果であった。3)MRSA分離株の検討 : 分離した164株中45株の性状を解析した。患者AとBの関連株は, すべてコアグラーゼIII型, エンテロトキシン(-), TSST-1(-)で, 薬剤耐性型及びDNAパルスフィールド電気泳動パターンが一致した。患者Cの関連株は, コアグラーゼII型, エンテロトキシンC型, TSST-1(+)で, 薬剤耐性型及びDNA型が前の群と異なるパターンで一致した。
- 宮崎県立看護大学の論文
著者
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島内 千恵子
宮崎県立看護大学
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橘 宣祥
宮崎県立看護大学
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江良 幸三
宮崎医科大学皮膚科
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江良 幸三
宮崎医科大学皮膚科:(現)福岡大学病院形成外科
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邊木園 幸
宮崎県立看護大学
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渡辺 よ子
宮崎医科大学医学部附属病院看護部
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