医療サービス生産に関する効率性分析の展望
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
今日の医療サービスにおける様々な問題の背景として,医療資源が地域間あるいは診療科間において偏在していることがある.そこで,具体的かつ整合的な医療資源の最適地域配置問題を検討することが重要となる.本研究の最終的な目的は,最適地域配置問題を検討する手法として実証的な線形計画モデルを構築することである.しかし,線形計画モデルを構築するには医療サービスに関する生産性など多くのパラメータを推定する必要がある.ところが,医療サービス分野ではこうしたパラメータを,正規分布を仮定した,統計学的手法によって推定することは以下の理由で困難であるとされてきた.すなわち,(1)規模の経済 (2)ケースミックス (3)病院の行動モデルの選択 (4)医師の役割 (5)不確実性の5点である.これら5点の中でも,(2)のケースミックスの問題については,生産物の定義,医療サービス投入要素の同質性,患者の同質性という3つの問題に詳しく分けることができる.これらの3つの問題は特に,経済学的に生産性を把握することを難しくしていた.ところが,1970年代後半にCharnesらによって,統計学的手法に基づいたパラメータ推定によらない,生産性の推定を可能にする手法として,DEA(Data Envelopment Analysis)という手法が提示された.この手法はそれぞれのDMU(Decision Making Unit)にとって,最も有利な可変ウエイトで効率性の測定を行うというものである.これにより,線形計画モデルに用いる生産性の推定が可能になるのではないかと考えたことが本稿の動機である.そこで,本稿では,今後の医療サービス分野の最適地域配置問題を解く準備として,生産性を推定するDEAについて以下の構成でのレビューを行う.(1)効率性の概念および具体的モデル,効率的フロンティア,CCRモデルなどDEAの諸概念の説明.(2)DEAを用いた先行研究.レビューの結果,データ制約を考慮しなければならないが,最適地域配置問題に関する線形計画モデルにおけるパラメータの推定にはDEAが有効であることがわかった.
- 川崎医療福祉大学の論文
著者
-
喜田 泰史
川崎医療福祉大学大学院医療福祉学研究科医療福祉マネジメント学専攻
-
清水 昌美
川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部医療福祉経営学科
-
荒谷 眞由美
川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部医療福祉経営学科
-
坂本 圭
川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部医療福祉経営学科
-
平田 智子
川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部医療福祉経営学科
-
植田 麻祐子
川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部医療福祉経営学科
-
清水 昌美
川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部医療秘書学科
-
喜田 泰史
川崎医療福祉大学医療福祉学研究科医療福祉マネジメント学専攻
関連論文
- 我が国の老人医療制度における公平性計測のアプローチ : 医療費集中度曲線の手法を用いて
- 医療秘書職の実態と今後の課題 : 医療機関を対象とした全国調査を中心に
- 医療サービス生産に関する効率性分析の展望
- 社会保障と医療福祉(医療福祉行政と医療福祉経済)
- 公的年金財政問題に対する諸改革案の比較 : 社会保障国民会議の提案を中心に
- 医療福祉施設における労働者の職務認識と人事労務管理に関する一考察
- 財政から見た障害者の自立に関する研究 : 身体障害者福祉施策を中心に
- 年金制度に関する経済学的分析の展望
- 障害者の自立支援に関する一考察
- 国際比較分析による我が国の医療費政策の課題
- 日本の医療財政の現状と課題
- 視認度の高いスライドについての考察
- 医療秘書科学生のコンピュータとワープロ学習に関する行動調査と意識調査
- 秘書教育における情報処理教育の実態調査 : 西日本地区の短期大学・専門学校を対象として
- 医療秘書科卒業生の実態調査 : 就労の実態と職業意識
- 医療秘書科のワードプロセッサ教育におけるローマ字入力とかな入力の速度と正確度の比較
- 日本の高齢化と地域の先進的取り組み
- 社会福祉法人のマネジメントからみた福祉システムの矛盾に関する一考察
- 社会福祉法人会計システムに関する一考察 : その理論と実践
- 農業経営における経営分析の活用 : 中山間地域の温州みかん農家の経営分析
- 医療評価の現状と課題 : 日米の比較を通して
- 医療福祉施設労働者の職務認識に関する調査研究
- 医療福祉経営学科学生の東日本大震災に関する意識調査