あおむけで他者,自己,物とかかわる赤ちゃん : 子育ちと子育ての比較行動発達学
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概要
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発達と進化を後成的にとらえる立場から,まずゴットリーブによる「行動の新表現型進化説」を参照し,個体発達によって新たな行動の表現型が生じて,それが世代を越えて維持されて淘汰の対象となっていく可能性を述べた。加えて,個体発達の改変にヘテロクロニーが関与していることを指摘した。続いて,人間への進化においては,発達初期の母子の相互交渉の変容が種に独自のあおむけを新たな行動の表現型として生みだした可能性を指摘し,通常は生後3〜4か月には安定したあおむけの姿勢でいられるようになることが,いかなる点で発達システムの進化とみなしうるかを,1)特大の新生児,2)「幼児期」の出現と複数者による養育,3)母子相互交渉におけるトレードオフ,4)ジェネラルムーブメント,5)自己接触行動,6)物の探索と操作の点から論じた。さらに,象徴や表象,言語は感情の発達が生みだしたものだとするグリーンスパンとシャンカーの「機能的感情の発達進化説」を紹介し,母子コミュニケーションと感情調整の発達の表象発生における意義と,これにかかわるあおむけの意義を述べた。最後に,出生後のあおむけでの活動としても引き継がれる胎児期の行動発達と母子コミュニケーションについて,4次元超音波画像診断装置をもちいて人間およびチンパンジー胎児を対象として実施した研究について述べた。
- 2009-04-20
著者
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