ボノボとゴリラの子どもの「物遊び」
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概要
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本研究は,2-4歳のボノボ2個体(3歳と4歳)とゴリラ3個体(2歳ー3歳)の対象操作について調べることを目的とした。道具使用の能力は,ヒトと大型類人猿を他の霊長類から際立たせている指標の一つである。この道具使用の前提として,対象操作の中でも定位的操作,特に物と物とを関係づける低位的操作が挙げられる。チンパンジーにおいては,道具使用に至るまでの対象操作の発達過程について研究がおこなわれてきた。しかし,同じアフリカ大型類人猿であるボニボとゴリラの子どもにおいて,その対象操作を調べた報告はほとんどない。本研究は,飼育下のボノボとゴリラの子どもの対象操作を自由場面で観察した。与えたものは,積木,入れ子のカップ,はめ輪の3種類だった。子どもがそれぞれの物に対しておこなった対象操作を,「身体部位」,「操作個数」,「動作」,「定位的操作」という4つの変数から分類した。結果は,同じような年齢のチンパンジーと同様,ボノボとゴリラの双方において全ての個体で定位的操作が見られた。ボノボとゴリラが,チンパンジーと同様な道具使用の能力の基礎を持っていることが示された。また,ボノボはゴリラに比べて多様な操作を足でおこなった。今回対象としたボノボとゴリラの子どもでは,一つの物を1種類の動作だけで扱うのではなく,2種類の動作で扱うことが多く,対応する年齢のチンパンジーの子どもと同じような発達過程にあることが示唆された。
- 日本動物心理学会の論文
- 2002-12-25
著者
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