国際技術溢出によるイノベーション志向学習 : 中国における電子関連企業の事例から
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概要
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多国籍企業(MNEs)の国際的な産業活動の急拡大は、国境を越えた事業展開と研究開発を大いに加速し、その結果、巨大な技術溢出(スピルオーバー)をもたらした。これは、多くの中国企業が固有技術を促進し、先進国との技術格差を減少させる最も重要な機会の一つである。中国に対する海外直接投資(FDI)そのものについて、或いはその技術溢出に与える影響については既に多くの研究がなされている。しかしこうした問題について、知識経営学の見地からの分析、特に中国の地域企業の組織学習などの過程に関する分析などはあまり行われていない。本研究は、中国厦門にあるエレクトロニクス関連企業の発展について詳細な記述を行い、同企業が様々な発展ステージにおいて、有効な組織学習を行ない、どのように多国籍企業(MNEs)との協力を行なってきたかを分析したものである。その結果、以下のような示唆を得た。1)企業の競争優位性を形成する暗黙知について、地域企業は多国籍企業への個人的な交流を通じて吸収することが重要である。2)イノベーションの創発には、形式知同様個人の内面にある暗黙知の組織内共有と交流が重要であり、暗黙知と形式知の効果的循環をもたらすため、柔軟な組織と緊密な内部交流、ミッション共有などが重要となる。3)有効な組織学習の形成には、経営トップの知識と経験:とともに、指導者としての深い洞察力も重要であり、自社の技術レベル、知識基盤、時機を得た戦略などが必要となる。グルーバル化により、多国籍企業と中国の地域企業との関係は今後ますます深まると考えられ、本研究は、より広い意味での国際化課程での知識溢出に関する組織学習という観点から普遍的な示唆を与えるものと考えられる。
- 2008-09-30
著者
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平野 真
高知工科大学
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劉 培謙
高知工科大学大学院起業家コース(博士後期)
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劉 鳳
高知工科大学大学院起業家コース(博士後期)
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張 軍宏
高知工科大学大学院起業家コース(博士後期)
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平野 真
高知工科大学大学院起業家コース
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平野 真
高知工科大学起業家コース
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