ハイテク・デバイス・ベンチャリングにおけるグローバル・アライアンス : 組織間学習の視点から

概要

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本研究は、ハイテク・デバイス産業におけるベンチャリングについて、グローバルな連携がベンチャリングの成功に重要な役割を果たした1つの事例について調査・分析したものである。グローバルな連携のうち、特に本研究では、21世紀の知識社会において企業の中核的競争優位性を確保するために極めて重要なファクターとなる「組織間学習」の側面に焦点をあてて考察した。ハイテク・デバイス業界では、製品寿命周期も短く、市場の成長位相は目まぐるしく変化していく。一方、デバイスの開発には、多くの時間と労力が必要で、この開発時間の長さと市場変化の速さという両者を整合させるために、他の組織からの「学習」というものが持つ意義は、他の多くの産業に比べ、ハイテク・デバイス業界ではとりわけ重要であるといえる。本研究で紹介する事例は、まさに2000年のITバブル期をエポックとして、急激な発展・変化を遂げた光通信分野における、キーテクノロジーとしての光学デバイスPLC(Planner Light-wave Circuits)の開発ベンチャーに関するものであり、当該ベンチャーは、第一の潜在的な市場である米国の開発投資機関と、技術シーズをもつ日本の大企業とが連携してつくった米国法人の合弁ベンチャーである。事例分析の結果、組織間学習過程における3つの重要な要件が示唆される。ひとつは、学習フロントとしてのベンチャーの自律性の獲得と維持である。この自律性という要素は、学習の初期過程において、外部の暗黙知を組織内に取り込み血肉化し内面化していく段階において、特に重要であると考えられる。もうひとつは、各組織間における非対称的、非平衡的な関係である。これは、「知」の流れを組織間での齟齬なく生み出す基礎といえる。第三の要素は、知そのものと組織運営との密接な関係性である。本事例では、暗黙知を組織内で共有化し形式知化していくプロセスで、ルースで柔軟な相互依存の人間関係が大きく寄与しており、ハイテクという先端的なイメージとはニュアンスを異にした素朴で共同体的な組織形態が組織間学習の有効性に作用していたようである。有効な学習が成立するためには、このような三つの条件が平行して成り立つことが垂要であり、事業の成功のためにはこうした様々な要件をタイミングよく整合させることが求められると考えられる。
国際ビジネス研究学会の論文
2006-09-30

著者

平野真
高知工科大学

ハイテク・デバイス・ベンチャリングにおけるグローバル・アライアンス : 組織間学習の視点から

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