解釈は訓読にどのように反映されるか : 松岡雄淵の「師説」と小寺清先『校正日本書紀』
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概要
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今般進出の『神代紀師説』は、松岡雄淵の日本書紀神代巻についての解釈を記したものである。雄淵は『校正日本書紀』の編者小寺清先の師であり、『校正日本書紀』には雄淵の解釈が反映されているものと想定できる。そこで『校正日本書紀』神代巻に見える訓読が、先行の諸伝本とは異なっている箇所について、『神代紀師説』に示された雄淵の解釈がどのように影響しているかを検証した。その結果、本文の記述内容についての解釈を述べるという行為と、漢文本文に加点しこれを訓読するという行為は、本文に対しての立場を異にする視点から行われるものである、ということが明らかになってきた。解釈説は本文ついて理解した内容を解釈者が自らの立場で述べたものである。これに対して訓読は、本文について加点者が理解した内容を本文の側(言い換えれば原著者の側)に立って表現したものである。さらに『校正日本書紀』に先行する諸伝本に見える訓読では、この二つの視点が不分明である例が多く見られ、『校正日本書紀』と先行諸伝本の間での訓読上の差異はこのような視点の違いに起因するものがあることも明らかになった。これは、漢文文献を訓読するという行為が、解釈説を表明することとは切り離されて行われるようになった、つまり本文を理解する行為の中での、訓読そのものの位置付けが本質的に変化したことによるものと考えられる。
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