10. 静岡県内における地震予知観測態勢と地震活動との関連

概要

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東海地域の地震予知観測態勢については1976年8月の東海地震説発表以来急速に整備され、1979年の大規模地震対策特別措置法による地震防災対策強化地域の指定によって本格的なものとなった。静岡県内には気象庁など国の機関や大学によって地震予知観測施設が整備され、これらの施設は年々増設されている。原則的には測地学審議会の建議による地震予知計画によって整備されているが、実際には地震予知業務または予知研究に携わる人々の東海地震に対する考え方が影響していると思われる。地震予知観測態勢の整備と地震活動や地殻変動の記録等が、何らかの関連があるのでは無いかと考え考察してみた。静岡県内に展開されている地震と火山噴火予知観測施設は、平成3年4月の静岡県地震対策課調査によると250か所に及び、観測項目としては地震、体積歪、地盤傾斜、ラドン濃度、地下水位、重力等の13種類もの測定を行なっている。ただし、すべての観測が常時観測ではない。これらの観測を気象庁、国土地理院、東京大学地震研究所、名古屋大学等、13の機関が実施し、観測記録は地震予知連絡会において定期的に報告されている。観測施設整備の増加率は、予算計画、研究観測の途中から観測業務として移行したものや、技術革新によって実用化されたもの等あり一定の整備量にはなっていない。東海地域の地震活動としては1978年から始まった伊豆半島東部の群発地震、伊東沖海底噴火以外に特別な活動もなく静穏化の状況が続いている御前崎付近は季節変動を含んでコンスタントな沈降が継続しているが、1987年頃より沈降速度が加速され平均年間沈降量が約5mmであったが最近は約6mmとなっている。御前崎付近の地盤標高は、1966年の測量の値に比較して1990年までに16cmほど沈降した。今の所、巨大地震の発生につながるような異常現象は見当たらないと見られる。しかし、御前崎付近の沈降速度の加速や静岡県中部地域の地震活動の静穏化のように、15年前の状況より変化している現象もある。東海地震の発生が近付いていることは誰も疑わない所であり、ますます地震予知への期待が大きくなっている。その期待に答えるためには、設置した地震計や歪計などの機能レベルを保ちながら、GPSやレーザーなど年々進歩する科学技術を利用した観測施設の整備を進めること。また、各項目ごとの観測点を増設していくことの他に、現象の変化に伴ってデータその物の評価を実施し、施設の改良が速やかに出来るようにすること。情報については多くのデータが気象庁に集中管理されているので、警戒宣言にいたるまでの現象の変化について進行状況が分るデータの定量化が望まれる。東海地震予知を成功させるためには、予知観測に携わる職員や研究者の予知に対する意欲とともに、事象や社会現象にとらわれない基礎的な予知研究の発展が鍵を握っていると思える。
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