最適貸付契約のダイナミック・モデル
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概要
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本稿では,Laffont and Tirole(1993)第9章および伊藤(2003)第7章の分析に依拠しながら,貸付契約のダイナミックな側面を考察した.具体的には,宇惠(2007a)の1期間モデルを,銀行(プリン氏パル)と企業(エージェント)の関係が2期間続く状況へと拡張した.そして,2期間をカバーする長期貸付契約を最初に設計し,締結する場合と,毎期新たな短期貸付契約を更改する場合とを比較し,検討した.本稿の分析を通して得られた主要な結果の一つは,ラチェット効果により,最適な長期契約を短期契約の繰り返しによって再現することはできないということである.すなわち,もしも銀行が1期間モデルでの最適契約を毎期繰り返すこと(最適な長期契約の履行)ができるのであれば,第1期に企業のタイプは完全にセパレートされる.企業は,しかしながら,短期契約において銀行はそのような契約にコミットできないので,第2期になると借入額と元利合計額が調整されてレントが奪われてしまうであろうと予想する.その結果,企業は第1期に自分のタイプを偽って非効率的であると報告しようとするため,最適な長期契約を短期契約の繰り返しによって再現することはできないのである.
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