情報収集,開示および最適貸付契約
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概要
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本稿では,Laffont and Tirole(1993)第11章の分析に依拠しながら,情報収集と情報開示に焦点をあわせたモデルを構成し,銀行(プリンシパル)が企業(エージェント)と貸付契約を締結する場合の最適契約設計の問題について検討した.宇惠(2007a,b)のモデルではいずれも,企業が契約以前に何らかの外生的な理由で情報を私的に保有し,銀行は何らかの追加的な情報も利用できないと仮定している.これに対して本稿では,これまで捨象していた情報収集と情報開示という方向にモデルを拡張する試みを示した.具体的には,宇惠(2007b)のモデルに情報提供者(本稿ではシンクタンクと呼んだ)を新たに加え,参加制約さえ満たせばシンクタンクは情報を正直に開示するケースをベンチマークとし,それと比較検討する形で,シンクタンクと企業の間に共謀の可能性があるケースについて分析した.本稿の分析を通して得られた主要な結果の一つは,共謀の可能性があり,共謀を防止する契約を銀行が設計する場合には,銀行は,非対称情報下における非効率的なタイプの企業の努力を引下げることによって,効率的なタイプの企業とシンクタンクの両者に対するレントを節約しようとするため,効率的なタイプの企業に対するレントのみを節約しようとするベンチマークでの最適努力よりも,さらに過小な努力も引き出すことになる,というものである.
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