借手の私的情報と最適貸付契約
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概要
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本稿では,伊藤(2003)第1章の分析に依拠しながら,銀行が,借手である企業と貸付契約を締結する場合の最適契約設計問題について検討した.企業は,有利な投資機会を持っ(効率的な)企業と有利な投資機会を持たない(非効率的な)企業の2種類のタイプに分類される.銀行が企業と契約を締結するに当って,取引する企業のタイプがどちらであるかは企業のみが知っており,銀行にはわからない.企業のタイプが企業の私的情報となっており,銀行と企業の利害に関連したすべての情報はタイプの違いによって記述しつくされていると仮定する.ただし,銀行も企業も共に,銀行が取引する企業のタイプが効率的である確率がどれだけであるかは知っているものとする.本稿の分析を通して得られた主要な結果の一つは,銀行が取引する企業が非効率的なタイプである可能性が高まると,非効率的なタイプの企業には契約への参加を許さない場合の最適契約は,参加を許す場合のセカンドベストの契約よりも劣る可能性が高まる,というものである.
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