不完備契約と銀行貸付
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概要
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本稿では,Aghion and Bolton (1992)の分析に依拠しながら,不完備契約の状況下における,資金の貸手である銀行と借手である企業の間での貸付契約について理論的に考察する.この分析の目的は,決定権の初期配分が契約に及ぼす効果と,融資後の再交渉における両当事者の相対的な交渉力が契約に及ぼす効果を明らかにすることである.本稿の分析を通じて得られた主要な結果は以下の通りである.まず,融資がなされる前の契約によって効率的な状態をもたらすことができなくとも,再交渉が行われるのであれば,取引当事者は事後的に効率的な状態を達成できる.次に,事前に決定権を適切に配分することによって,事前の非効率性が解消される可能性がある.しかしながら,事前における決定権の配分を誤ると,融資そのものが行われなくなる可能性もある.最後に,再交渉における相対的な交渉力は,企業と銀行の所得分配に影響を及ぼすことを通じて事後的な効率性の達成に影響を与える.
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