女性支援教育の課題探索 : 大妻女子大学調査から(1)
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概要
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女性支援教育は、たんにジェンダー論や女性学を教えるということではなく、長期的に女性を支援するものとして、カリキュラムの体系として、また大学全体の取り組みとして行われる必要がある。筆者は女子大学の社会的位置づけを探るべく、女性支援教育という新たな概念を軸に、文献調査、大妻女子大学の在校生ならびに卒業生を対象とした質問紙調査を行った。本稿ならびに続編である「女性支援教育と高等教育システム-大妻女子大学調査から(2)-」は、このうち「女性支援教育にかんする基礎調査」のなかからジェンダー論・女性学に関連する項目について分析を行い、女性支援教育への基礎データを提供することを目的としている。「女性支援教育にかんする基礎調査」は、在校生457人、卒業生301人を対象として行なわれた。ジェンダー論の授業によって、対人関係への変化の萌芽がみられ、また社会を認識する方法や、性による不平等等にかんして価値観の変化がみられた。また、将来のビジョンにかんして、授業の受講により不安を感じた者も多く、その発展的解消が新たな課題となった。またジェンダー論を扱う授業への評価は、学卒後の経年変化と相関している可能性があり、女性支援教育は、長期的展望にたって計画されなければならない可能性が示された。女性支援教育は、一種の教養主義的な性格をもつものとして、女子学生たちの情報を受け取る経路、意識の変化に大きな影響を与えうる。女性支援教育としてのジェンダー論に求められているものは、主に社会的関係、恋愛・結婚、就労の分野において、情報経路の開拓、疑問の触発、怒りと不安の誘発、そしてそれらの段階的解消に必要な思想や方策を示すことである。それらの点がデータによって確認されたことにより、より女性支援教育の必要性と重要性は増したと思われる。
著者
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