腦膿瘍ノ成立及ビ治癒機轉ニ關スル實驗的研究
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概要
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腦膿瘍ニ關スル病理組織學的研索ハ屍體材料ニヨツテ或ハ實驗的研究ニ於テモ可成リ多數ノ業績ヲ認メルガ,共ノ研究方法ガ何レモ比較的不充分ナル爲ニ,未ダ其ノ成立機轉或ハ治癒的經過等ニ就テ詳細ナ報告ヲ見ナイ.故ニ余ハ家兎腦内ニ一定毒力ノ葡萄状球菌及ビ連鎖状球菌溶液ニ浸セルがーぜ片ヲ挿入シテ實驗的ニ腦膿瘍ヲ發生セシメ,其ノ腦組織ニ就テ神經諸要素ノ微細變化ヲ檢索ンテ膿瘍發生並ニ治癒機構ニ關スル諸種ノ問題ニ就テ研究シタ.染色方法トシテ中樞神經纎維軸索ハCajal氏鍍銀法,まくろぐりあハCajal氏金昇汞法及ビみくろぐりあ,おりごでんどうぐりあ染色ニ對シテハHortega氏法三宅川氏變法ヲ用ヒタ.實驗成績トシテ先ヅ神經纎維ハ膿瘍内デハ消失シテ,全ク其ノ痕跡ヲモ認メナイ.其ノ邊縁部ニアルモノハ顆粒状ニ崩壌シ,比較的抵抗力ノ張ク殘存シテヰル纎維モ結節様ノ肥厚ヲ有シ,或ハ帽針頭様ノ終末ヲ以ツテ終ツテヰルモノガ少クナイ.病竈部ヲ距ルニ從ヒ,此等ノ變化ハ輕度トナルガ比較的遠隔ノ部位ニ於テ最早,著シイぐりあ細胞ノ變化ヲ有セズ,叉遊走細胞ノ浸潤等モ認メナイニ拘ラズ,神經纎維ノ變性ヲ證明シタ事ハ腦組織ニ於テモ複雜ナ機能ヲ營ム神經細胞ハ最モ抵抗力ノ弱イモノデアル事ヲ示シ,叉臨牀上腦膿瘍ノ際ニ諸種ノ遠隔症状ガ現レル事實モ,此ノ組織學的所見ヨリ説明シ得ルモノデアルト思惟スル.叉實驗後80日以上ヲ經過シタモノニモ再生現象ハ發見出來ナカツタ.叉ぐりあ細胞ノ變化トシテハ,實驗初期ニハ病竈部附近ニみくろぐりあ及,おりごでんどろぐりあガ著シク増加シテ,該細胞ハ分解産物ヲ喰儘シテ著シク腫大シ,其ノ原形質内ニ脂肪顆顆或ハ多數ノ嗜銀性沈着物ヲ入レル.突起モ同様,腫脹,短縮シテ,遂ニハ細胞體ハ全ク突起ヲ失ツタ圓形ノ,邊縁ガ不整ナ水疱様ノ形態ヲ呈シテ脂肪顆粒様細胞ニ移行スルモノガ多イ.之ニ反シ,陳奮ナ化膿竈ニアツテハまくろぐりあガ著シク増殖シ,殊ニ病竈附近ニハ特ニ多數集簇シテヰル.同時ニ細胞原形質並ニ突起ノ膨大セル巨大細胞叉ハ突起ト細胞體トノ識別ガ困難デ,唯ダ無構造ニ近イ,太イ棍捧形ヲナシ,結締織類似ノ形態ニ變化シタモノガ化膿病竈周縁ノ第一層ニ位置シ,其ノ外方ニハ多数ノ突起ヲ新生シタまくろぐりあガ之等ノ突起ヲ以テ相互ニ密ニ聯結シテ強固ナぐりあ網ヲ形成スル.斯クシテ臟膿瘍ノ治療工作ハ最初,みくろぐりあ,おりごでんどろぐりあニヨツテ清掃作用ガ營マレ,次デまくろぐりあニヨリ膿瘍被膜ガ作ラレテ化膿ノ進行ハ防禦サレ,同時ニ瘢痕形成ヲ營ミ,治癒ノ機轉ヲ採ル事ヲ知悉シタ.
- 京都府立医科大学の論文
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