女子高等教育の量的拡大と質的変容 : 1990年度以降の変化に注目して
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概要
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要旨 本稿の目的は、日本における女子の高等教育の量的拡大と質的変容を明らかにすることである。天野正子は、『女子高等教育の座標』 (1986) において、戦前から1980年代までの女子の高等教育の変化を捉えた。それを端的に示せば、量的な拡大をとげたものの、それは変革につながるものではなく、「女性専用軌道」を定着させたという。彼女が分析した時期は、高等教育がまだ一部エリート女性だけが享受できる段階であった。女子だけに限れば、それはM.トロウ(MartinTrow) がいうところの「エリート段階」(進学率がおおむね15パーセントくらいまで)から「マス段階」への移行期に該当する。そこで、本稿は、対象を4年制大学に焦点化し、その進学率が15パーセントを越えた1991年から、2006年度までを取り上げる。この間の量的変化を分析したところ、学生数の増加、進学率の上昇など、量的な拡大傾向が確認された。しかし、女子学生の専攻分野に関する分析からは、特定学部に集中する傾向がみられた。増加率が高かった領域は、教養系や学際系であり、質的変容が生じているとは言い難い結果であった。したがって、1990年以降の女子高等教育は量的に拡大し、質的には多様化がみられるものの、20年前に天野らが指摘した結果と大きな変化はないことが明らかになった。
- 2009-02-15
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