奥羽山脈栗駒山に断片的にみられるオオシラビソ林の立地環境について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
東北日本の一部山岳では,亜高山性針葉樹林が発達すべき温度領域空間にも関わらず針葉樹林帯が形成されていない地域があり「偽高山帯」と呼ばれている。「偽高山帯」の成因の究明には,オオシラビソ林がごく最近まで,あるいは現在も分布拡大の途上にある可能性を考慮した上で,小面積でオオシラビソ林が存在する山岳におけるオオシラビソ林の分布規定要因を究明し,侵入,定着の過程を明らかにすることが重要な手がかりとなる。本稿では,オオシラビソがごく小面積で分布する栗駒山林岳において林分の立地を解析し,その結果を踏まえてオオシラビソ林の分布規定要因の検討をおこない,同時にオオシラビソ林の成立過程を考察した。秣岳におけるオオシラビソ林は,高標高域,風背側斜面に分布する独自の傾向を示したが,一方で標高,斜面傾斜角度,斜面傾斜方位,地形に関して,分布傾向は他群落と重なっていた。林内の土壌は厚さ20cm程度で腐植層および腐植を含むローム層からなり,西暦915年に降下した十和田a火山灰が,基盤となる岩塊層に近い位置に存在していた。高標高の風背斜面域には積雪が多く,冬季の低温や風衝からの保護が期待される。オオシラビソ林はこのような条件下に分布していると考えられるが,加えて,林内での土壌厚が薄いことは林床のササの卓越を妨げ,その結果,更新の面から林分の成立にプラスに働いていると考えられる。To-aが岩塊層に接する深さに確認されたことは,岩塊を覆う十分な土壌の発達と,これに相応する十分な植被の成立はTo-a降下当時まではなく,降下後にオオシラビソが定着し,林分を形成して今日に至っていることを示唆している。
- 2006-06-25
著者
関連論文
- 奥羽山脈栗駒山に断片的にみられるオオシラビソ林の立地環境について
- 総合討論
- 上高地梓川氾濫原におけるハルニレ実生の発生と定着
- 南アルプス仙水峠周辺における岩塊斜面上の植生分布の規定要因
- 栗駒山のオオシラビソ小林分の分布特性
- 宮城豊彦・安食和宏・藤本 潔, 2003, 『マングローブ-なりたち・人びと・みらい-』, 193 pp., 古今書院, 本体価格3,500円, ISBN4-7722-1462-3
- 植物学会会長あいさつ
- 地すべり地における植生とその立地条件
- 海面の上昇とマングロ-ブ
- ヒマラヤ高山帯の植生とその分布パタ-ン (ヒマラヤの高山植物--その適応と生態)
- 植物群落への林野火災の影響 (林野火災の生態)
- 土地改変と生態系--植生の配置構造 (大規模土地改変と第4紀研究)
- 周氷河地形と高山植生のかたち (特集 高山植物研究の現在--アルプスからヒマラヤへ)
- 社会環境と植生
- あらためて"植生"
- 土地改変と生態系--植生の配置構造 (大規模土地改変と第4紀研究)
- ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)の世界での活用事例(ユネスコMAB(人間と生物圏)計画-日本発ユネスコエコパーク制度の構築に向けて)
- 特集「ユネスコMAB(人間と生物圏)計画-日本発ユネスコエコパーク制度の構築に向けて」 : 趣旨説明(ユネスコMAB(人間と生物圏)計画-日本発ユネスコエコパーク制度の構築に向けて)
- ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)の世界での活用事例