後遺症をもつ脳血管障害患者の退院・転院後の痴呆の改善とその関連要因
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概要
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脳血管疾患は後遺症として麻痺、失語症、機能障害を残すことが多く、それらは痴呆やねたきりを招き、患者の生きがいや社会的活動にも影響を及ぼす要因となっている。高齢化が進む中で、健やかな老後を送るためにも痴呆の予防は重要である。そこで、本研究は、後遺症を有する脳血管障害患者の退院・転院後を追跡し、痴呆の改善とその関連要因を明らかにすることを目的とした。対象者は脳血管障害のため平成5年8月1日から平成6年1月31日の間に0県内の3つの公立総合病院に緊急入院した患者のうち、麻痺を残さず退院した者、発症後6ヶ月を過ぎた者、意思疎通のとれなかった重度の意識障害および拒否する者を除き96人を分析の対象とした。調査項目は、(1)性別、(2)年齢、(3)配偶者の有無、(4)同居者数、(5)診断名、(6)脳外科手術の有無、(7)脳血管障害の既往の有無、(8)麻痺側、(9)下肢麻痺の程度、(10)訓練意欲、(11)自発的意思表示、(12)視力、(13)退院先、(14)日常生活動作、(15)痴呆の15項目である。痴呆の指標は長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS-Rと略す)を、日常生活動作(以下ADLと略す)の指標をGranger改訂版Barthal Index(以下B.I.と略す)を用いた。痴呆と非痴呆の判定は、HDS-Rの20点以下を痴呆、21点以上を非痴呆として分類した。データの解析は、SPSS統計パッケージを使用し、検定は、平均値はt検定、分布はX^2検定、重回帰分析はF検定を行った。分析の結果から以下の知見が得られた。1)年齢、同居者数、麻痺側、下肢麻痺の程度、訓練意欲、自発的意思表示、視力、退院時B.I.点の8変数を説明変数とする重回帰分析では、3ヶ月後HDS-R点の重相関係数R=.787、寄与率R^2=.620となり、3ヶ月後HDS-R点と8変数の関連が示唆された。また、ADLの中の尿失禁も同様に3ヶ月後のHDS- R点に関連することが示唆された。2)重回帰分析の結果、3ヶ月後HDS-R点に有意に相関する変数は年齢、同居者数、下肢麻痺の程度、訓練意欲、自発的意思表示、退院時B.I.点の6変数であった。3)非痴呆と痴呆に判別して退院時と3ヶ月後の分布の変化をみると、脳血管障害の後遺症を有して退院・転院した患者は、痴呆に悪化する者(14.0%)と、非痴呆に改善する者(30.0%)が出現し、身体的な改善の可能性のある時期に関連要因を踏まえた援助は痴呆の予防に有用であろうことが示唆された。以上の結果から、脳血管障害患者においては前述した関連要因をふまえ、患者および家族に対し、特に身体的な改善の可能性のある時期に痴呆の予防および改善に努めるよう援助することが重要である。
- 沖縄県立看護大学の論文
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