両側腎細胞癌の治療 : 自験例からみた治療術式の検討

概要

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両側腎細胞癌3例に,それぞれ異なる手術術式を用いて治療を行った.両側腎摘除術を施行した47歳男子例は,長期間血液透析で管理し,再発・転移なく経過したが,5年後に透析合併症のため死亡した.一側腎摘除術・他側腎部分切除術を行った64歳男子例は,術後7年間再発・転移なく健在である.一側腎摘除術・他側腫瘍核出術を施行した71歳女子例は,術後2年8ヵ月の時点まで再発・転移の徴候を認めていない.以上の経験から,両側腎細砲癌に対する外科的療法について,われわれは次のごとく考えている.1)無腎状態での血液透析で長期間生命を維持させることは困難である.従って腎提供者の見通しがたたない場合には,両側腎の摘除はできるだけ避けた方が良い.2)腎部分切除術は予期以上に良い成績を示すので,他臓器転移を認めない症例では可能な限り腎組織を保存すべきである.かかる症例に対して積極的に体外手術を応用すれば,さらに成績が向上する可能性がある.3)腫瘍核出術も症例を選べば応用価値のある術式と思われるが,その評価は今後の課題である.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1987-05-20