職場におけるうつ病者の経過と予後
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概要
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精神衛生相談クリニックを持たない2企業において,うつ病者60例の職場復帰後の経過と職場適応について調査を行ない,うつ病者の職場復帰後の追跡管理のあり方について検討した.1)対象者の半数は復帰後5年以内になんらかの職務変更や職場異動を行っていた.死亡(自殺)例は1例と比較的少なかった.2)再発は当初の4年間に集中して多く,生命表分析では4年目までに45%が1回以上の再発をみるものと思われた.再発は初回発病時と同一の状況を契機として生じる傾向にあった.3)職場適応の状態については,50%が一般健康人と同等かそれ以上の良好な適応水準を示したが,職務の遂行上問題のある例も17%存在していた.4)職場適応に関与する要因は,復帰後1〜2年では初回の休養期間が一定以上あることであり,3年以後の場合には職位・学歴・婚姻状態といった背景要因が有意に関連していた.再発回数は期間にかかわらず適応状態と強い関連性を示した.5)産業医・保健婦および職場側の関与は長期的な適応予後と強い関連性を示し,特に前者の役割が重要と思われた.結果から,職場復帰後のうつ病者に対して,再発予防を主眼とした追跡管理が少なくとも4年間にわたって継続されることが望ましいと思われた.この際には産業医・保健婦を中心として,職場や治療担当医との連携の下に患者の発病状況に注目した援助・指導を行なうことが重要と考えた.
- 社団法人日本産業衛生学会の論文
- 1987-09-20
著者
-
川上 憲人
東京大学医学部公衆衛生学教室
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小泉 明
東京大学医学部公衆衛生学教室
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川上 憲人
東京大学医学部公衆衛生学
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小泉 明
東京大学医学部公衆衛生学教室:(現)昭和大学医学部衛生学教室
-
樫村 博康
日立病院心療内科
-
小泉 明
東京大学医学部公衆偉生学教室
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小泉 明
東京大学医学部
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