9016 徳川家霊廟の御廟前石之間廊下(日本寺社(3),建築歴史・意匠)

概要

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徳川家霊廟において、拝殿前に石之間廊下が付き、廻廊・仏殿（本殿）までが一体化して王字型平面が成すものがあることは、厳有院・常憲院・文昭院・有章院の各霊廟に関する戦前の報告によって知られ、その先駆は、上野の大猷院霊廟（慶安５年 1652）であったらしいことが「上野寛永寺境内絵図」（都立中央図書館東京誌料）から指摘されている。これらから徳川家霊廟の成立時期を考えると、意匠的な問題を除けば、大猷院霊廟をもって成立したかのように思える。　一方、これとは別に、御廟（御宝塔）拝殿の前にも石之間廊下付いたものがあった。拝殿と唐門をつないで一体になり、全体にＴ字型を成す平面をとったが、こちらについては十分な検討があるとはいえない。　本稿は、延宝９年(1681)造営の厳有院霊廟（第一次）以降の徳川家将軍霊廟を扱って、御廟拝殿につながる石之間廊下の有無や規模・形式について、造営や修理に関わった大工家の史料を基に考察を加えたもので、御廟を中心とする部分を加えた霊廟全体の形式が整う時期について再検討するための一助としたい。
2003-07-30