11年前に記述した生育史と現在の回想について30代女性がもつ印象

概要

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本研究の目的は,11年の間隔をおいて語られた2回の過去の語りを比較して,本人がどう感じるかを分析することである。11年前(学生時代)に生育史を書いてもらった30代の女性20名に面接調査を行い,幼少期から短大時代の生育の過程を再度回想してもらい,現在の回想と11年前に書いてもらった生育史の記述を比較してもたれた印象について分析を行った。その結果,同じことが語られているという印象をもつ者が多い一方,語りが異なるという印象も多く,忘れていたがそういえばそうだという場合や,記憶にないという場合,あるいは今はそう思わないとする者が見られた。記憶になかったり今はそう思わないという回想内容の変化が8割の者に見られた。全体的には「〜は同じだが,〜は違う」という回答が多いが,「同じ」という言明がない者や「違う」という言明がない者も数名ずつ見られた。内容がかわったことについては,「何でこんなに変わったのかわからない」とする者が見られる一方,違ったことの意味づけをし,自分なりに解釈しようとする者も見られ,過去の再構成だけでなく,過去のとらえ方の変化も現在もつ自分の物語にあわせて説明される場合があることが示された。
順天堂大学の論文