保守系オピニオン誌における外国人言説(1) : 1990年代前半までの雑誌『SAPIO』を中心に
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概要
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本稿は1980年代以降に創刊された新興の保守系オピニオン誌の一つである『SAPIO』における外国人言説を考察したものである。1989年の創刊から1990年代前半までの在日外国人に関連する記事を分析した結果、「われわれ=日本人」という主体による「混住社会ニッポン」の実現が90年代初頭には語られていたが、そこで暗黙に想定されていた「外国人」とは、『SAPIO』の主要な読者である企業サラリーマン層からみて同質性が高く、理解可能でコントロール可能な客体、いわば他者性を縮減された「外国人」であった。しかし「外国人犯罪」に関する記事のなかで、「外国人」=加害者(主体)と「日本人」=被害者(客体)という図式が強まり、「外国人」を理解やコントロールが困難な他者性を孕んだ主体として表象するようになるにつれ、最初期の「混住社会ニッポン」を構想する主体としての「われわれ=日本人」という言説は後退し、やがて「混住」というキーワードは誌面上から消えてしまう。かわりに誌上に現れたのは、日本社会にとって〈有益な外国人〉-〈有害な外国人〉という二項対立的な図式であり、それが1990年代後半以降における『SAPIO』の外国人言説の基調をなすことになる。
著者
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