樺太産馴鹿の蛆症蝿
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概要
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昭和18年及び19年の二回に亘り,樺太から北海道に8頭の馴鹿が移入せられ,本学の前身であつた帯広獸医畜産専門学校において,種々の実験に供された。その際,筆者の一入,上田はこれらの馴鹿に寄生していた2種類の蛆を発見し,その症状及び寄生蛆の生態を調査すると共に,種名の同定を高野に依頼した結果,Cephenomyia trompe LINNE及びOedemagena tarandi LINNEであるごとが判明した。上記の研究結果を要約すれば次の如くなる。1.馴鹿の鼻腔及び咽喉に発見された蛆はCephenomyia trompe LINNEと同定された。2.この蛆の寄生を受けた馴鹿は11月頃から鼻漏がだんだん激しくなり,3〜4月頃になれば鼻漏に血液を混するようになり,5月頃から嚏がひどくなつて,遂に鼻孔から老熟した蛆を放出するようになつた。この状態は6月まで続いた。3.放出された蛆は土中に上体を半分位挿込んで1-2日の間に踊化した。4.踊の期間は25日内外であつた。5.羽化は毎朝7-9時の間に行われ,蠅の生存期間は6月頃室温で1.5-7日間であつたが,日光の直射するところでは温度の急激な上昇によつて10-20分間で死んだ。6.馴鹿の皮下に発見された蛆はOedemagena tarandi LINNEと同定された。7.この蛆が皮下に穿入して組織内に居る間は色々の刺戟を与え,その結果屡々膿を伴つた腫脹を起すものである。8.幼虫は冬の期間,皮下で成育し,4-5月頃老熟して皮膚に孔を開け,脱出して地上に落下し,蛹化するものである。9.然しながら,筆者らの取扱つた馴鹿は,この蛆の老熟前に斃死し,屍は解剖に附されたので,老熟蛆も,踊も,成虫も得られなかつた。10.筆者らは標本と文献によつて,これら二種の蠅の幼虫,踊及び成虫の特徴を記し,最後に説明図版を添付した。
- 帯広畜産大学の論文
- 1952-03-25
著者
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