戦後日本における牛乳及び乳製品の需要分析 : 需要の構造変化と時系列・横断面分析の統合
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概要
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本稿では戦後日本における牛乳及び乳製品の需要の実態を計量的に明らかにするために,次のような点に注意を払いながら分析した。(1)戦後急速に伸びて来た牛乳及び乳製品の需要が昭和40年代に入ってから鈍化ないし減少していることに着目し,計測期間を昭和30〜41年(前期)と42〜53年(後期)に分けてその需要構造を調べた。(2)特に昭和42年以降における通常の時系列分析と横断面分析の食い違いを解決し,統計的に有意なパラメータを推定するために時系列データと横断面データを統合したプール・データを一般化最小自乗法(GLS)によって計測した。以上の分析から得られた結果は次のとおりである。(1)所得弾力性は牛乳が後期になって大きく低下したが,バター,チーズとともにまだ1.0以上であり,今後所得の上昇とともにこれらの品目の需要は伸びるであろう。(2)価格弾力性は牛乳,チーズともに負で極めて小さい値を示し,価格の変動に比較的鈍感になることを表わしている。しかし,バターは負で大きな値を有し,価格効果が大きいことが分かる。(3)代替効果は牛乳に対する飲料,バターに対するマーガリンにおいて大きいことが確められた。これは牛乳,バターがまだ日本人の食生活に十分定着していないことを意味し,今後代替財との競争に耐えられる新製品の研究開発及び学校給食などによる牛乳・乳製品の食生活への定着化が必要であることを示唆する。(4)バターは1人当たり年間平均消費量としては減少傾向が見られるが,これはマーガリンへの代替や消費者のコレステロールに対する過剰反応に基づく表面上の現象で,統合モデルによる所得弾力性の値が正で高いので,社会全体としての消費はまだ十分伸びる余地を持っていると思われる。(5)粉ミルクは今日の日本における食生活の中では育児用以外には財としての機能を失ない,ギッフェン財であると断言してよいであろう。
- 1981-06-25
著者
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