入院中の小児の在宅移行に必要な訪問看護に対する課題その1 : 兵庫県下の病棟看護師を対象とした質問紙および面接調査の分析より
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概要
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近年、高度な医療的ケアが必要な子どもが自宅で生活するケースが増加している。今回、兵庫県において在宅移行が推進されない患児の実態と小児訪問看護へのニーズを明らかにするために郵送法による自記式質問紙調査と半構成的面接調査を行った。質問紙調査は単純統計による分析と、面接調査は事例検討を行った。訪問看護が充実すれば在宅移行が可能な小児の数は、看護管理者から回答のあった37病棟に53名、33外来に59名、病棟看護師からは総数57名だった。病棟看護師の質問紙調査によると、患児の年齢は0-4歳児の幼児が52%、家族形態は核家族が75%を占めていた。入院している患児に必要な医療的ケアでは、吸引、経鼻経管栄養などの高度なケアが6割以上に必要で、実施頻度も高かった。また、主たる介護者の技術等に本人または医療者が不安を感じている児のほとんどが吸引・経鼻経管栄養を必要としていた。また、人工呼吸器による呼吸管理が必要な児の割合は4割近かった。これらのことから在宅に移行するにあたって家族の負担の大きいことが予測できた。家族の負担感を考慮に入れながら、技術習得に向けた援助が必要である。在宅支援に関する課題としては、「一時的に預かってくれる施設がない」があげられ、上記とあわせ、レスパイトの充実が求められている。また、経済的負担に関して、公費負担を受けられるような援助も求められている。病棟看護師は家族による児の状態の受け止めが、在宅移行に影響すると認識していた。家族の思いにそったかかわりが重要となる。また、医師との在宅に関する認識・方針の不一致も語られており、調整が求められる。面接で看護師は小児の訪問看護に対して、知識不足だと語っており、質問紙でも直接ステーションに連絡した経験のある看護師は少なかった。60%の病院に小児の在宅相談窓口がないことを考えると、看護師が小児訪問看護に関して情報収集を行い、情報提供や連絡・仲介の役割を担う必要性があると考える。在宅サービスを受けている小児とその家族の調査を行い、現状を明らかにすることが今後の課題である。
- 兵庫県立大学の論文
- 2007-03-15
著者
-
勝田 仁美
兵庫県立看護大学
-
勝田 仁美
兵庫県立大学看護学部生涯健康看護講座小児看護学
-
小迫 幸恵
兵庫県立大学看護学部生涯健康看護講座小児看護学
-
勝田 仁美
兵庫県立大学看護学部
-
寺下 久美子
兵庫県立大学看護学部看護基礎講座
-
三宅 玉恵
兵庫県立大学大学院看護学研究科
-
大向 征栄
兵庫県看護協会明石キャンパス訪問看護ステーション
-
三宅 一代
兵庫県立大学看護学部生涯健康看護講座
-
岡田 和美
兵庫県立大学看護学部生涯健康看護講座
-
寺下 久美子
兵庫県立大学看護学部看護基礎講座基礎看護学
-
岡田 和美
兵庫県立大学看護学部生涯健康看護講座小児看護学
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