畑土壌における有機質資材施用後の脱窒の推移と二酸化炭素発生の関係
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概要
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有機質資材の脱窒に及ぼす効果を圃場条件で調査するために中央農業研究センターの人工枠圃場の4種類の畑土壌(典型淡色黒ボク土,腐植質厚層黒ボク土,中粒質普通灰色低地土,細粒質台地黄色土)について,牛糞堆肥,および乾燥豚糞を施用してニンジンを栽培し,概ね月1回の頻度で脱窒を実測した.脱窒速度は未撹乱土壌にアセチレン阻害法を適用して現場温度条件で測定した.また,有機物分解過程と脱窒の定量的な関係を求めるために,二酸化炭素発生速度も同時に測定し,土壌タイプ等の違いについても考慮しながら,脱窒速度との相関性を解析した.得られた主な結果は以下のとおりである.1)供試した乾燥豚糞は易分解性有機物を多く含んでいるので,堆肥施用3日後には総ての乾燥豚糞区で約0.2〜0.5mgN kg^<-1>d^<-1>と著しく高い値を示し,特に灰色低地土と台地黄色土で高かった.その後の推移から判断して積算の脱窒量推定に重要なのは,施用から1ヵ月程度の間であると思われた.また,10〜20cm層については,有機質資材施用の影響が明らかに認められ,その持続期間が表層土よりも長いと考えられた.2)作物栽培前の有機質資材施用土壌で灌水の有無が脱窒速度に及ぼす影響を調査した.圃場での施用有機物分解に及ぼす降水の影響は二酸化炭素発生速度では数十%の増加に止まっているのに対し,脱窒速度では有機質資材施用と降水の相乗作用によって2〜3桁にも及ぶ著しい増加の起こりうることが示された.3)施用有機物の分解指標となる各時点の二酸化炭素発生量に対して,その時の脱窒速度の累乗値をプロットして相関性を検討した.二酸化炭素発生速度は,脱窒速度の平方根と高い相関関係を示し,脱窒量が脱窒酵素量と土壌中の酸欠領域の広がりの両者の影響下に進行することを考えると,有機物分解に伴うこの二要因の相乗的な効果と現場の脱窒の比例関係がほぼ成立するということが示唆された.
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 2006-08-05
著者
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