アルコールと肝 : その病像の変遷
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概要
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アルコール性肝障害の過去・現在・未来について考察した。飲酒による肝障害の主な原因は,アルコールまたはその代謝産物によるということは現在では常識と考えられている。しかし,歴史的にみると栄養障害によると考えられた時代があった。それがLieber達の飲酒動物実験で飲酒に関連した肝障害はアルコールまたはその代謝産物であるアセトアルデヒドの直接作用でおこる事が証明された。またこの実験はアルコール性肝障害の進展(肝硬変への進展)にアルコール性肝炎,即ち肝細胞の障害が必須前駆病変かどうかという疑問にも答えを出し新しいアルコール性肝障害の分野をひらいた。即ち,アルコール性肝炎を経ずアルコール性肝線維症から肝硬変へ進む経路を示した。この線維症はアルコールまたはその代謝産物により小葉内間質(傍類洞腔,傍肝静脈)に存在する間葉系細胞(伊東細胞,筋線維芽細胞)が一次的に膠原線維を産生し線維化が発生する。日本ではこの型の肝障害が主であることが報告されている。このような経過を経てアルコールにより肝障害が発生することが認識され,最近では内皮細胞への作用,免疫系への作用,炎症・組織障害修復に対する影響,発ガンのプロモーター作用等アルコールの生物学的作用の多彩性が示され,アルコール性肝障害の発生・持続・進展を多角的にみる研究が進んでいる。
- 1989-11-01
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