Environment Creation Currency : A Simple Guide to Community Currency for Establishing Sustainable Society
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概要
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本稿は、山本・嵯峨・貫『環境創造通貨』(日本経済評論社、2005年)の主要諸章の要約に、本書の解題としてかかれた小文を加えた原文の英訳である。環境創造通貨は世界に5000あると言われる地域通貨の一種である。環境創造通貨は、「貨幣による生産と消費との疎遠な分離」を本質とした、資本主義市場経済の本質的問題点を克服する試みである。本質的な問題点とは、「生産者と消費者との人格的な分離」、「生産場所と消費場所の空間的分離」、「生産と消費の時間的分離」、「農村から分離した消費都市の成立」などを引き起こす、「生産と消費との疎遠な分離」である。確かに、「生産と消費の分離」無しに如何なる「経済発展」も「豊かな生活」もあり得なかった。他方「分離」は、資本主義以前のいかなる社会も経験することのなかった、様々な生活上の困難をもたらしている。即ち、好況・不況の激しい波、経済恐慌、過密・過疎、地域コミュニティーの崩壊、廃棄物問題、交通混雑、二酸化炭素濃度上昇による温暖化・異常気象の常態化、生活時間のずれによる家族関係の解体などは、「分離」抜きには起こりえない問題である。21世紀のグローバル資本主義は「生産と消費の分離の完成」であり、「地球規模での生活環境破壊の深化」である。我々は、自給自足の生活に戻ることはできない。とはいえ、このまま「分離」を深化させ、人間の生理的、社会的生活条件を崩し続けることもできない。唯一可能な選択肢は、社会的な規模で新たな生産と消費との緊密な繋がりを回復することである。「ヒトとモノの持続可能な再生産連関を地域社会の内部で作り出すこと」である。具体的には、様々な財・サービスの物的素材と貨幣価値が域内で循環できる地域コミュニティーを作り出すことである。「環境創造通貨」とは、「地域的利害を共有・リンク」させ、「持続可能な地域社会」を創出する社会インフラである。
- 2006-07-31
著者
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山本 孝則
大東文化大学
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嵯峨 生馬
NPO法人・アースデイマネー・アソシエーション
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貫 隆夫
大東文化大学
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木村 稜子
大東文化大学
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山本 孝則
桜美林大学
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嵯峨 生馬
特定非営利活動法人 アースデイマネー・アソシエーション
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