スハマソウのB染色体 : I. B染色体の形態と行動
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概要
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スハマソウ(Hepatica nobilis;岩手県花巻市六郎山産)101個体を用いて,仁形成部(NOR)を持つB染色体(Mabuchi,1991)について研究した。これらの個体の33株(32.7%)は,染色体数が2n=14の二倍体であったが,残りの68株(67.3%)は体細胞不分離を起こし,同一個体においても細胞間で付加されている数が0〜15と変異するB染色体を持っ異数体であった。なお,オルセイン染色,C-バンド法,Cd-バンド法および硝酸銀による銀染色法でB染色体の形態を比較分析し,B染色体にB_1,B_2,およびB_<ISO>の3型が区別された。B_1とB_2は動原体を末端部に,また大きさの異なる付随体を動原体の反対側の末端部に持ち,付随体の大きい型をB_1,小さい型をB_2とした。また,B_<ISO>はB_2に由来する同腕染色体である。これら3型のB染色体は,付随染色体と同様に,付随体および腕の狭窄側の端部域にNORを持っことが銀染色法で確認された。根端細胞核当たりの仁の数は,B染色体を持たない個体では1ないし2個であったが,B染色体を持っ個体では仁の数が増加しており,個々の仁の大きさは小さくなる傾向が見られ,1核当たりの仁の最大数は9個であった。花粉母細胞の減数分裂で,B染色体は多くの場合一価染色体となるか,互いに対合して二価,三価あるいは多価染色体を形成していたが,これらのB染色体と付随染色体の二価染色体とのend-to-endの対合も確認された。また,B染色体と仁,B染色体と付随染色体による多価染色体と仁との接合も移動期で観察された。これらの事実を基に,本種のB染色体の起源について議論された。
- 1992-10-30
著者
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松田 忠男
横浜国立大学教育学部生物学教室
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松田 忠男
Department Of Biology Faculty Of Education Yokohama National University
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兼田 博光
Department of Biology, Faculty of Education, Yokohama National University
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宮尾 小百合
Department of Biology, Faculty of Education, Yokohama National University
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斎藤 貞枝
Asahigaoka Town Lower secondary School
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兼田 博光
Department Of Biology Faculty Of Education Yokohama National University
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宮尾 小百合
Department Of Biology Faculty Of Education Yokohama National University
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