D.H.ロレンスと故地エトルリア : エトルリア民族の死生観について
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概要
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D. H. Lawrenceは(古代)エトルリア民族に本能的な関心をいだき、彼等と彼自身を同一視した。Lawrenceが晩年の1927年に執筆したEtruscan Places (1932)はエトルリア地方の気候、風土、自然について述べると同時に、エトルリア民族の歴史、性格、芸術、宗教を考察し、彼の思想が端的に表われた紀行文である。本論はエトルリア民族の主要な芸術石棺像、奉献像、墳墓内の壁画、キマイラ等の考察を通して、彼等の死生観を分析し、その生の世界を探ることを目的とする。エトルリア文化はその初期段階において、死に直面し、死を意識した文化であった。しかし、一方において、彼等が生に目を向けた時、意識下より意識の表面へと湧きでた生の芸術、宗教が発達した。その結果、当時の地中海諸国はギリシヤ芸術、文明の影響を免れることは不可能であったが、エトルリア民族特有の芸術、宗教が生まれるに到った。エトルリア民族最大の関心は生の世界であり、生きることそのもの、つまり、生を鋭敏に意識することで彼等の芸術は表現された。生は喜びであると同時に驚異であり、死後も永遠、無限の生の世界へ永続すると言う考えのもとにエトルリア民族の宗教は生まれた。エトルリア民族の芸術、宗教を考慮する時、ローマのVilla Giulia博物館所蔵の石棺の夫婦像に認められる微笑はエトルリア民族の死生観を象徴し、彼等(夫婦)は死後、喜ばしき驚異の生の旅へ、生の始源、永遠、無限へと旅立つ姿を表わしていると考えられる。
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